About "AT通信"

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NOVEL

「3 color's」---著[ルジェリア]---画[ちるね&みかん]---

目次

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第一項

「よ、よろしくお願いします・・・」

  小柄な弓スカウトの少年の声が戦場に響いた。

  栗色の髪の毛、透き通った青い瞳。
  手には新米兵士に渡される練習用の弓が握られていた。

  その少年は戦争の殺伐とした雰囲気に慣れてないのか、
  挨拶も躊躇していた。


  その少年を遠くから見つめる影が一つ・・・



  ― あら可愛い・・・。


  黒いローブ、黒いブーツ、黒いフード。
  全身真っ黒に染まった一人のソーサラーが心の中で呟く。

  顔は黒いフードで隠れているが、
  すらっとした体つきに大きな胸があることから女性と判る。

  年は・・・いくつだろか。顔が見えないせいで判断できないが、体つきからすると19歳前後だろうか。

  その女性の右手にはクリスタルを象徴した杖。

  どこか神秘的で近寄りがたい雰囲気を纏ったその人の口元が綻んだ。


  黒いローブの裾を風になびかせながら弓を持った少年に近づく。

  そしてぽんっと少年の肩を叩いた。


「ねぇ君。戦争は初めて?」


  後ろから降ってきた声に一瞬びくっとする弓スカウトの少年。
  ゆっくりと後ろに目を向ける。
  そこには自分より7センチ程背の高い全身黒いローブに覆われたソーサラーが立っていた。

  相手の表情が見えないせいか少し怖がっている様子の弓スカウトの少年。
  それに気づくとソーサラーの女性はすかさずこう口にした。


「ねね。PT組んでみない?」

「あ、はい・・・」


  パーティーという言葉を聞くとほっとしたような表情を見せる弓スカウト。

  そして黒いフードを外し、お辞儀をする女ソーサラー。

  さっきの黒いフードの下からは、ストロベリーとレモンが混ざったように
  グラデーションされた明るい色調のツインテール。
  ぱっちりとしたルビーのような赤の瞳。
  その目は少しだけ上につっていて勝気な印象を与える。
挿絵

「それじゃ前線行こうか。あ、私は・・・ウェルナね。これでもまだ17歳なの。よろしく。」

  ウェルナはにこっと微笑んで自己紹介をする。

  その笑みはどこかに子供っぽさが残っていて、
  それであってふんわりと大人っぽさが混じった笑みだった。

  そして黒いフードを再び被った。
  どうやら被ってないと落ち着かないらしい。

  そのあと"ちなみに3色皿なのー"と微笑んで付け足した。

「よろしくお願いします。ユオンっていいます。・・・ちなみに15歳です。」


  二人が前線まで着いたとき、既に前線はアロータワーや敵や味方の召喚獣で溢れ返っていた。

  戦争に慣れていないのか初めてなのか。
  ユオンは目を真ん丸にさせてただただ敵と味方の技が交互する前線に目を囚われていた。

  特攻してくる敵のウォリアー、特攻する味方のウォリアー。
  ソーサラー達の魔法は3色に輝きながら前線を突き抜けた。
  そして弓スカウトの矢の雨は絶えることを知らないのかというくらい凄まじく降り続ける。
  短剣を持ったとあるスカウトは、隣の味方の背後から突然現れ、
  2本の短剣で切りつけると、風のように去っていった。
  その短剣で切りつけられた味方は、地面にドサッと倒れこんだ。
  その様子を見ていたユオンは思わず声をあげてしまった。


「大丈夫。気絶してるだけだから、しばらくすればまた立ち上がれるよ。」

「う、でも人が・・・」

「心優しいのね。」


  ウェルナはふふっと笑う。と、不意に鋭い目つきに変わった。


「でもそんなんじゃ戦場では生けていけないわ。
 さ、前線で戦ってみましょ。私が前に出るから後ろから弓でしっかり援護するのよ!」

「え!? そんな、でも僕・・・」

「さあがんばりましょ! 怖くないから。ね?」


  こわくなーいこわくなーいと呪文のように語りかけるウェルナ。


「でも怖いものは怖いんです・・・! 僕裏方やりますから・・・」

「あっぶなーい!」


  いつの間にかユオンの影に溶け込んでいたスカウトが不意に姿を現した。
  間一髪ウェルナの氷魔法が短剣を持った敵を吹き飛ばした。


「ひいいぃぃっ!!」

「一人で戻ろうとするとまた来ちゃうかもね。
 どうする? 頑張って戻るのかしら。一人で・・・ね。」


  フフフ・・・と不気味な笑みを見せるウェルナ。
  まださっきの衝撃的な光景が脳裏に焼きつき、恐怖に支配されたまま動けないユオン。


「う、後ろから援護すればいいだけ・・・ですよね?」

「もちろん。弓スカはあんまり前に出なくていいからね。」


  それを聞いてユアンはほっとしたような表情になる。

  そしてまだあまり手になじんでいない木製の弓を構えた。


「すぱーく・・・ふれああ!」


  ウェルナが呪文のようなものを唱えると、前方の広範囲にドーーーンと大爆発が起こった。
  そして前線は炎の海と化し、人の悲鳴が聞こえてきた。

  その光景にビクビクしながらもユオンは弓を構える。


「い、、イーグルショット・・・」


  ユオンの弓から朱色の光が放たれる。
  その一発は前に出ていた敵のソーサラーに見事命中した。

  乱れた呼吸を整えようとするユアン。
  弓を握っていた手は汗だくになっており、ポタポタと汗が落ちてきた。

  ガタガタと震えるユオンの手には自然と力が入らなくなり、
  先ほどまではしっかり握られていた弓も地面に寝転がっていた。


  戦場がいまだ賑わっている中、一つの影が近づいてきた。


「さっきのイーグルショット当たったね! おめでと!」

「うぅ・・・次の戦争から・・・ずっと裏方だけやりま・・・す。」

「えー・・・裏方なんかより前線のが楽しいわよ。」

「ウェルナさんはそうかもしれませんが・・・ぼ、僕は・・・」


  その瞬間ウェルナの背後から黒い影が飛び出してきた。


「!」


  慌てて弓を構えるユオン、何が起こっているのか分かってないウェルナ。
  その黒い影の手にはギラリと光る銀色の短剣が2本・・・



  ドサッ


  鈍い音が響いた直後、一人の"人"が地面に倒れた。

  戦場の風はどんなこともお構いなしに吹き抜けた。
挿絵


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「ノベル-AT通信-」作者と作品一覧

作者
作風
作品
Anry
Anry近影
独自の世界観が特徴。キャラ同士のセリフの掛け合いも面白い。
「Ring of the Kingdom」「War Dogs」他、読みきり1点
ルジェリア
ルジェリア近影
恋愛系が多め。女の子らしい内容が貴方を癒してくれるはずです!
「3 color's」他、読みきり3点
レゴルス
レゴルス近影
ギャグか?ギャグなのか?!本人は至って本気の作品達。BL臭がするのは僕が腐っているからか、、、。
読みきり3点
ディガル
ディガル近影
戦争・戦闘描写が細かい。何度も読み返す価値があるかと。
読みきり「浦波」
カヤ・エリル
カヤ・エリル近影
何気ない日常・会話、その中でふと考えてしまうことってありますよね。そういうお話。
読みきり「それを、覚えているだろうか?」
xxMILKxx
MILK近影
ファンタジー世界への飛び込めるような内容。あと恋の始まりの香りがぷんぷんしてきます。
連載小説「題名の無い物語」

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