About "AT通信"

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NOVEL

「Ting-un-lingue」---著[ルジェリア]---画[ちるね&みかん]---

目次

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第一項(完)

それは一瞬の出来事だった。
何が起こったのか分からなかった。

「敵キ・・・」

味方の叫び声は其処で途切れた。
キープのほうから何か花火のような大きな音がした。
― 確かキープのクリにはミーシャが・・・

「ミーシャ?」

俺はそのとき輸送ナイトをやっていた。
僻地からクリを銀行・・・戦友のミーシャに届けに行こうとした
その時に大きな爆発音は響き渡った。

何が起こったのか分からない。だけど、何だか嫌な予感がした。
急いでキープまで戻ってみると、其処にはひとつの屍が。
俺は急いで召喚を解除して傍に駆け寄った。

「おーい・・・?」

キープの付近は霧のようなモヤが漂っていて、
異臭がした。それを嗅ぎ取ると意識が朦朧とし始めた。
名前を呼びながら彼女を探すが、彼女からの応答は無かった。

俺の足に何か当たった。
何だろう・・・と思いつつも拾う。
武器だった。
ニンバスと呼ばれるソーサラーの武器。
誰かの落し物だろうか・・・
ニンバスを元あった場所に戻そうとした瞬間、
微かだが鈴の音が聞こえた。

「・・・?」

僅かに聞き覚えのある音色。
でも何処で聞いたか思い出せない。
ふと思いついた。落っこちていたニンバスを振り回してみる。
ちりん。ちりん。と音が鳴る。
変な武器。
でもなんだかひっかかる。

ちりん・・・

鈴の音がはっきりと聞こえた瞬間思い出した。

この武器は・・・嗚呼・・・




『ミーシャ、二等兵に昇格したんだってな』
『うん。頑張ったんだよ!』
『はいはい。記念にこれやるよ。お守り』
『・・・鈴?』
『俺がガキの頃大事にしてたもんだけど・・・いらなかったら捨て・・・』
『この音色。気に入った!』

ちりん。

そういって彼女は鈴を鳴らした。
その時の笑顔が未だに脳に焼き付いてる。
挿絵
『こんなもんで喜ぶのか・・・ガキだな』

どうして素直になれなかったんだろう。
ほんとは嬉しかった。些細なことで彼女が笑ってくれるのが。

『えへへ?大切にするよっ』
そう言って彼女は鈴をニンバスの根元にくくり付けた。
『こうすれば絶対失くさないもんね!』


あれから2ヶ月しか経っていない。
どうして思い出せなかったんだろう。
・・・受け入れがたい現実。
でもメルファリアでは特に珍しくも無い。
今までだって何人もいなくなった奴を見てきた。
俺の友人も何人も死んだ。
でもその時の哀しさとは比べ物にならないほど何かが押し寄せてきた。
この思いがなんだか分からない。

「確かに・・・失くさなかったな」

彼はぼろぼろになったニンバスを握り締めたまま、
クリスタルが枯れ果てた戦場から去っていった。
挿絵


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「ノベル-AT通信-」作者と作品一覧

作者
作風
作品
Anry
Anry近影
独自の世界観が特徴。キャラ同士のセリフの掛け合いも面白い。
「Ring of the Kingdom」「War Dogs」他、読みきり1点
ルジェリア
ルジェリア近影
恋愛系が多め。女の子らしい内容が貴方を癒してくれるはずです!
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レゴルス
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ギャグか?ギャグなのか?!本人は至って本気の作品達。BL臭がするのは僕が腐っているからか、、、。
読みきり3点
ディガル
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戦争・戦闘描写が細かい。何度も読み返す価値があるかと。
読みきり「浦波」
カヤ・エリル
カヤ・エリル近影
何気ない日常・会話、その中でふと考えてしまうことってありますよね。そういうお話。
読みきり「それを、覚えているだろうか?」
xxMILKxx
MILK近影
ファンタジー世界への飛び込めるような内容。あと恋の始まりの香りがぷんぷんしてきます。
連載小説「題名の無い物語」

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